終戦直後の焼け野原で、物がない時代。それこそ娯楽なんて数えるほどしかなかったような時代に、「つまらない」なんて、誰も言うこともなかったように思います。
そう考えると、今我々が持っている「つまらなさ」というのは、現代の「豊かさ」と決して無縁ではないように思うのです。
楽しいことを求める時の「楽しい」というのは、何かが地にあって、その平坦なところから、くっきり浮かび上がったものが初めて「楽しい」となるんですね。他の時代、他の人と比較してみて、どれをどう取り上げても今は楽しいはずなのに、地が全部同じモノであれば、楽しくなんかありません。
私たちが生きている時代は、まったくその通りで、目立ったものが浮かび上がってこない時代なわけです。だから、いつもつまらない、いつも同じことばかり起きていて、どうやって生きていったらいいか分からない。あるいは、毎日が過ぎていくのが虚しい、というようになってしまうんです。
では、私たちは日本の、あるいは世界の歴史の中で、そんなにつまらない、それこそ「生きていてもしょうがない時代」を生きているのでしょうか。
いや、豊かで、楽しさを求めた究極の姿が、現代なはずです。
院長 高橋龍太郎著書 『人生にはしなくてもいいことがいっぱいある』より抜粋