30代、40代なのに、「なぜか物忘れが激しくなった」なんてことはありませんか。
あるいは、上司に指示されたことが頭に残らないとか、「あの件、まだ片付いていないのか。やっておいてくれと言ったはずだぞ」と怒鳴られてはじめて思い出すとか、仕事の納期直前になって気づき、焦って頭の中が真っ白になるとかいうこともあるかもしれません。
その原因は、脳の記憶装置をフル活用していないからです。
たとえば、頻繁に連絡をとる相手の電話番号や、1週間のスケジュールなど、昔ならすべて頭に叩き込んでいたことも、今はすべてパソコンやスマホに情報を入れ込み、あとは忘れてしまうので、記憶が脳に定着しにくくなっているのです。
私自身、かつては10〜20件の電話番号を記憶していたのに、今は自分の電話番号くらいしか覚えていません。それだけ頭を使わなくなっているのです。
人間は本来、とても高い記憶能力を持っています。『古事記』に書かれている内容をすべて記憶し、口承していたという稗田阿礼のような人が特別なのではなく、誰でも本を1冊くらいは暗唱することができるのです。
昔は自分の頭で記憶していたことをスマホや携帯に入れるから記憶として定着しない。ストレージ(スマホや携帯、タブレットなどでデータを保存しておく外部記憶装置のこと)が装置としてできあがると人間の脳は働かなくなっちゃうんです。
そういう傾向が若い人に増えています。本来なら使える脳の機能を、外部のストレージに預けているので、脳が働かなくなる。 記憶すべき重要な事柄が頭から抜けてしまうんですよね。
だから「これ、やっておいてね」と言われても、その直後にスコーンと抜けちゃう。
締切1時間前になって「まだやってないのかー」と言われて頭真っ白でいっぱいいっぱい・・・・・そういうビジネスシーンでも山ほどあるのではないでしょうか。
頭をあまり使わずに年をとると認知症になりやすい、という研究報告もあります。
パソコンやスマホといった「外付け脳」は本当に便利なものですが、何もかも「外付け脳」に任せてしまうのは危険です。大切な情報をパソコンやスマホに入力し、忘れてしまった場合に備えておくのはいいのです。
でもせめて、自分と家族の電話番号、誕生日、この先1週間の予定くらいは、パソコンやスマホを見なくても言えるようにしておきたいものです。
院長 高橋龍太郎著書『仕事も人間関係も「いっぱいいっぱい」にならない方法』より抜粋