うつ病とは
うつ病は、誰にでも起こりうる心の病気です。日本では、生涯のうちに約15人に1人がうつ病を経験するとされており、特に働き盛りの世代に多くみられます。女性の方がやや多い傾向があり、自殺のリスクとも深く関係していることから、早めの対応が大切です。
「気分が落ち込む」「何をするにも気力が湧かない」といった症状が続いている場合は、ひとりで抱え込まず、ぜひ当院へご相談ください。
原因について
うつ病の原因は単一ではなく、さまざまな要因が重なり合って発症すると考えられています。たとえば、人間関係のトラブルや環境の急激な変化、身近な人との別れといった心理的・社会的なストレスがきっかけとなることがあります。また、脳内の神経伝達物質であるセロトニンやノルアドレナリンの働きの乱れも、うつ病に関与しているとされています。これらの神経伝達物質は感情や意欲、睡眠、食欲などに関わっており、バランスが崩れることで心身の不調が生じると考えられます。さらに、遺伝的な体質も関係している可能性があり、家族内にうつ病の既往がある場合にはリスクが高まることもあります。なお、結婚や昇進といった喜ばしい出来事であっても、環境の変化が大きいとそれ自体がストレスとなり、うつ病の引き金になることもあります。
うつ病になりやすい傾向
うつ病は誰にでも起こりうる病気ですが、発症しやすい性格傾向があることが知られています。たとえば、真面目で責任感が強く、他人の期待に応えようと無理をしてしまいがちな方、また自分に対して厳しく評価してしまうような方は、特に注意が必要です。こうした傾向を持つ人は「メランコリー親和型性格」と呼ばれ、社会的には評価されやすい一方で、自分を追い詰めてしまいやすいという面があります。
また、近年では「非定型うつ病」と呼ばれる新しいタイプのうつ病も注目されています。これは、気分の落ち込みに波があり、楽しいことには一時的に反応できるという特徴を持ち、従来のうつ病とは異なる様相を示します。非定型うつ病では、ルールや社会的枠組みに対するストレスに敏感で、必ずしも真面目で勤勉というわけではなく、どこか現実から距離を置いたような感覚や、漠然とした万能感を抱えている場合もあります。こうした多様なタイプがあるため、うつ病の診断と治療には専門的な視点が欠かせません。当院では、それぞれの患者様に合わせた丁寧な診療を行っておりますので、ご自身やご家族のことで気になることがあれば、いつでもご相談ください。
うつ病の症状
- ●睡眠の問題(寝つきが悪い、過眠など)
- ●食欲の変化(食欲不振または過食)
- ●疲労感や倦怠感
- ●頭痛、肩こり、便秘などの身体症状
- ●気分の落ち込み
- ●興味または喜びの著しい減退
- ●死ぬことについて考える
周囲が気づく変化
- ●ご家族や職場の方が気づく変化も重要なサインです。
- ●笑顔や会話が減る
- ●遅刻や欠勤が増える
- ●ミスが増える、集中力が落ちる
- ●興味のあったことへの関心が薄れる
- ●飲酒量が増える、食事量が減る
もし周囲の方に気になる変化が見られたら、早めの受診を促してあげてください。
治療について
うつ病は、適切な治療を行うことで回復が期待できる病気です。当院では、症状やライフスタイルに応じて、休養、薬物療法、心理療法などを組み合わせた治療を行っています。
休養
まずは、心と体をしっかりと休めることが回復への第一歩となります。仕事や学業から一定期間離れ、自宅などの安心できる環境で過ごすことで、精神的な負担を軽減します。必要に応じて、入院による治療を検討する場合もあります。
薬物療法
うつ病の治療において、脳内の神経伝達物質のバランスを整えることは非常に重要です。うつ病では、セロトニンやノルアドレナリンといった感情や意欲に関わる物質の働きが乱れていることがあり、これに対して抗うつ薬を用いることで、心の安定を取り戻すことが期待されます。
抗うつ薬の効果は、服用を始めてから徐々に現れることが多く、通常は2〜3週間ほどかけて改善がみられるようになります。即効性がないため、治療初期には効果を実感しにくいこともありますが、焦らず継続することが大切です。また、薬による治療に不安を感じる方もいらっしゃるかと思いますが、当院では、効果だけでなく副作用についても丁寧にご説明し、ご本人のご希望や体質に応じて適切なお薬を選択いたします。
主に使用される抗うつ薬には、セロトニンの働きを高めて精神を安定させるSSRI、セロトニンとノルアドレナリンの両方に作用するSNRI、神経伝達物質の放出を促すNaSSA、そしてやや古いタイプではありますが一定の効果がある三環系・四環系抗うつ薬などがあります。薬の効果や副作用には個人差がありますので、ご不明な点がありましたら遠慮なくご相談ください。
心理カウンセリング
「家族との関係がうまくいかない」「職場のストレスがつらい」「学校に行けない」など、日常生活のさまざまな悩みについて、臨床心理士、公認心理師や精神保健福祉士によるカウンセリングを受けることができます。主治医の判断のもとで実施しており、丁寧な対話を通して、問題の整理や自己理解を深めていきます。時には、自分自身の内面に向き合う過程でつらさを感じることもありますが、専門スタッフがそばでしっかりと支えます。
一般精神デイケア・ナイトケア
タカハシクリニックでは、「心の病や障がいを持つ人が地域社会の中で生きるお手伝いをする」ことを理念に、デイケアやナイトケアにも力を入れています。精神科デイケアは、病状が安定してきた方がリハビリを行う場であり、社会生活を取り戻すための大切なステップです。外部講師によるヨガやジャズダンスなど、楽しみながら取り組めるプログラムも多数用意されており、自信と意欲の回復につながっています。
ご相談ください
- うつ病は、決して「甘え」や「気の持ちよう」ではありません。適切なサポートを受けることで、回復に向かうことができます。当院では、患者様お一人おひとりの状態に応じた治療を行っております。ご本人だけでなく、ご家族からのご相談も受け付けていますので、どうぞお気軽にご相談ください。